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zoom RSS アメリカ音楽史 ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで

<<   作成日時 : 2011/11/27 12:01   >>

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ロック、ジャズ、ブルース、ファンク、ヒップホップ…音楽シーンの中心であり続けたそれらのサウンドは、十九世紀以来の、他者を擬装するという欲望のもとに奏でられ、語られてきた。アメリカ近現代における政治・社会・文化のダイナミズムのもとその“歴史”をとらえなおし、白人/黒人という枠組みをも乗り越えようとする、真摯にして挑戦的な論考。(本の内容紹介より)

ブログ主のように、アメリカのポピュラー音楽が好きな・・というより、十代の頃からフォークやロックやポップスを聴いてきた者でも、歴史の流れの中で、「それらの大衆音楽は<実際にはどうだったのか>」と考えると、わからないことだらけだ。更に具合が悪いことに、日本では日本独特の「洋楽の理解や受容」が行われていて、そしてそれは、その時代のイデオロギーや、批評家やジャーナリストの解説に明らかである。

たとえば、ジャズ。黒人のジャズと白人のジャズという安易な二項対立と本質主義により、或いは、ジャズ史と文化革命を重ねあわせようとした左翼評論家たちによる頭でっかちな言説により、ブルーノート・レーベルのレコード番号を整理することがジャズだというマニアたちにより、また、レベルは落ちるが、ジャズはメロディーか即興か、というジャズ喫茶店主どうしの馬鹿げた論争が成立してしまうことにより、ジャズのもつ多様性や豊かさがどれだけないがしろにされてきたかと考えると、なさけない気がする。

ブルースだってそうだ。この本で著者が明らかにしているように、ブルースには、貧しい黒人労働者が粗末な衣服を着て、ギターを抱えて哀しい物語を歌う、という半ば固定化されたイメージがある(それが百%間違いではないものの)のだが、実はそれは、ブルースに興味を持った知識人が「ブルースを<発見>」した過程で作られたブルースの仮の原型であり、実際は、そんなものではなかった。

以上はこの本のほんの一部にすぎないが、著者は、ミンストレル・ショーを手掛かりに、「他者を擬装するという欲望」というテーゼを前面に出して、アメリカの音楽を、フォーク・ミュージックからヒップ・ホップまで議論している。とても意欲的で、従来の常識に挑戦しているし、おまけに、文章が読みやすいのが好ましい。未熟な研究者の文章ほど読みにくいものはない。

ちょっと理由があって、ブログ主の現在の感心事は、「アメリカのフォーク・ミュージックとはなにか?」、なのだが、この本を読み、フォーク・ミュージックとカントリー・ミュージックの関係から60年代のフォーク・リバイバルまで、アメリカ合衆国が独自の文化を「創造」しようとする過程での「偽装」や、純粋主義への希求などがわかり、勉強になった。偽装と純粋主義(著者は純粋主義という言葉は使っていない)は一見矛盾するようだが、偽装することにより、純粋で「匿名性」を重視するフォーク・ミュージック==著者は「〈擬装〉と〈匿名性〉というフォークの価値観」と述べる==を求めるという逆説にこそ、アメリカ音楽としてのフォーク・ミュージックがもつ本質が見えるのである。

ところで、最近の「格差社会批判デモ」の映像をYouTubeで探すと、21世紀の今も、フォーク・シンガーたちが、ウディー・ガスリーのThis Land is Your Land(下)をギター一丁で歌っている。この曲は、労働者の米国国歌とも称されるフォーク・ソングで、国威を発揚するためではなく、ひとりの人間から見たアメリカ合衆国のあるべき姿を平易な歌詞で表現している。ウディー・ガスリーは、フォーク・ミュージック・リバイバルの頃に、ピート・シーガーやボブ・ディラン他に多大な影響を与え、日本のフォークにも波及。高田渡の背後にはウディー・ガスリーが立っているともいえる。ウディー・ガスリーの遺産が今も生きているのは、アメリカ合衆国において、フォーク・ミュージックが、反近代、反権力、反商業主義、労働運動、社会主義思想への志向性を持つ音楽として連綿と歌い継がれている証拠である。



以上の他、この本には「眼からウロコ」の知見がたくさんあり、刺激的だ。ブログ主は、中村とうよう氏が編集長時代の『ミュージック・マガジン』の読者だったので、良くも悪くも「中村とうようイズム」に影響されている。この本は、その解毒剤的な効果も有している。(苦笑)

なお、中村とうよう氏は、今年の夏、突然他界(自死だと報道されている)された。ご冥福をお祈りしたい。

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