テーマ:文学

『すばらしい墜落』 ハ・ジン 著 / 悲劇は喜劇、喜劇は悲劇

2009年に出版されたハ・ジンの短編集"A GOOD FALL"の邦訳書がこれ。苦渋に満ちた、しかし、悲喜劇のような12の物語が収められている。場所はニューヨークのチャイナタウン「フラッシング」。大学院生や高学歴の登場人物が多いが、ブルーカラーや僧侶、中国から出てきた老母なども重要な役割を果たしている。中国生まれもいれば米国生ま…
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あの日、パナマホテルで / 「いたいけ」な恋

シアトルの航空会社を早期退職し病の妻を看取ったヘンリーは、絶望の淵にいた。そんなとき、戦時中収容所に移送されることになった日系人が密かに運び込んだ荷物が地下から40年ぶりに発見され、騒然としているホテル横を通りかかる。目に飛び込んできた鯉の絵の傘…ケイコのだ!脳裡には、戦争のため離ればなれになった初恋の日系少女の面影が鮮やかに蘇…
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わたしたちは何故小説を読むのか?/ 『わたしを離さないで』

この、陰鬱で、Gloomyで、更に高温多湿で台風まで来る2011年の7月に、よりにもよってカズオ・イシグロの長編小説『わたしを離さないで』を読むことはない。実際、読み進めてすぐ、「あ、こらアカンわ」と、放り出しそうになったし、これを友人に勧める気にはならない。しかし、ある理由で、最後まで読んだ。そして疲れた。 確かにこれは…
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「巡検」の成果 ― 敦賀と杉原千畝と絵本

大天災+大人災の前に、こころが、「嶋々や千々にくだけて夏の海」(芭蕉)の日々だが、当ブログは別に「自粛」はしない。今日もブログ主の「うだ話」を聞いていただく。不謹慎だと感じた方は別のサイトに移動して下さい。あ、「うだ話」というのは大阪弁で「意味のないことを喋る」という意味です。 先日、福井県の敦賀に行った。その前の長浜から…
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ヒロシ・カシワギの詩集 OCEAN BEACH

2009年の暮れにご子息のSojiさんから手渡しでいただいた詩集。既に発表された作品も収められているるが、違和感は全然ない。ヒロシ・カシワギ(Hiroshi Kashiwagi)という名前を知ったのは○十年前の学生時代のこと。アジア系アメリカ人が出していた雑誌に詩が載っていて、それは、日本の現代詩のような難解なものではなく、「と…
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片桐ユズルさんの傘寿を祝う会 ― 再会の京都

ユズルさんもとうとう80歳ということで、むかし、付き合いのあった知り合いたちが傘寿を祝う催しをやるというので出かけた。この企画を知ったときには、どうなることかと勝手に心配していたが、なかなかの盛況で、旧友と再会して過去を振り返るだけでなく、それぞれのひとの今の位置を理解する、というか、参加者で中山容さんの平安女学院短大時代の教え…
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HOWL: Allen Ginsberg - ビートニクスと朗読

ユズルさん(片桐ユズル)からビートニクスやらギンズバーグのことを聞いたかどうかは三昔前のことなので忘れてしまったが、手元にあるのは1959年に録音されたギンズバーグの自作詩朗読CDで、59年はちょうどユズルさんがフルブライトで渡米した年なのも偶然の一致か。実況とスタジオ録音があるが、実況のほうが妙な抑揚がなくていい。若い声のギン…
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中山 ラビ 「人は少しづつ変わる」.wmv

つい先日、とある会で、「中山容さんはどんな人だったか」と尋ねられた。アジア系アメリカ文学関係の集まりなのだが、容さんという人は、大学で英米文学や米国史を教えていたのに、アカデミックな活動をしているのを周囲に見せたことがなかった。実は、アメリカの大衆文学についての論文などを、研究者としての名前(本名)で書かれていたし、僕はそれを読…
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衣乾したり 天の香具山 / リービ英雄と「言葉の杖」

『千々にくだけて』に感心した後、リービ英雄の著書とは離れていたが、今度出た『我的日本語』を、移動の間に、またたくまに3回以上読み返した。読むたびに付箋が増えていく。(笑)この本を読むために、空港へ早めに着き、がらんとした待合室でまた読んだ。なお、いつも付箋を持ち歩いているわけではない。仕事に必要なのでかばんに入れていたのが役に立…
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鴨川デルタじゃなくて出町の三角州 - 鴨川ホルモーの怪

これはズルい。京都で学生時代を過ごした読者なら泣いて喜ぶ小説だから。書名は知っていたけれど、奈良公園の鹿が喋るドラマくらいしか著者のことは知らなかった。先日、大学の後輩から「あれ、おもろいでっせ」と勧められ(彼は西宮出身の関西人)て文庫を買い求め、鞄に放り込んだ。 仕事から仕事への電車の中で読み出したら止まらなくなった。ま…
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好きの嵐 ― 現代詩とポピュラーミュージック

山本秀行さんの書いたものを目当てに手に入れたらケネス・レクスロスについて言及した論文がふたつも入っていて、「珍しいなぁ」とページをめくっていたのだが、途中で、「ああ、これは<好きの嵐>やな」と苦笑してしまった。それに、偉大な○○とか、名曲とか、そういう余計な修飾語が出てくるので、レクスロスやディランやレナード・コーエンが好きだと…
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ロバート・ブライ詩集 石のなかに涙を見るような気がする

『仕事!』という本を翻訳していた頃、突然、中山容さんがこちらを見て「○○さん、あのね、訳者あとがきの最初にさ、このロバート・ブライの詩を持ってこようとおもうんだけど、どうかねぇ」と口にした。 ロ・・・ロバート・ブライ・・誰ですかそれは、と戸惑う私。こっちは文学は門外漢で、ましてやアメリカ詩などほとんど知らない。でも、そんな…
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血塗られた雛人形 Blood Hina - 陪堂って何?

ナオミ・ヒラハラ女史の推理小説、そう、70歳を過ぎた二世の庭師、マス・アライが鋭い洞察力と庭師らしい観察眼で難事件を解決していくあのシリーズの最新作がこれだ。邦訳された作品については、このブログでも既に取り上げているので、興味のある方は検索してみて下さい。 で、これ(上写真)はヒラハラ女史から直接頂戴した出版前の宣伝用のコ…
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うつろ舟 ― 日系ブラジル文学とは?

「ブラジル文学界最長老の選集を編みましたのでお届けします。北米の移民小説とは違いがあるのでしょうか。いずれ感想をお聞かせ下さい」という便箋が挟まれて拙宅に届いたのが『うつろ舟』松井太郎著(松藾社)2010。「ブラジル日本人作家 松井太郎小説選」と表紙にあるように、ブラジル在住のベテラン作家、松井太郎氏(兵庫県神戸市生まれ。19歳…
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二世部隊 ― 感情的にならずに事実を追いかけること

ブログのおかげで数年前に知り合ったのがリエナクトをするひとたちで、その出来映えに感心した僕は、知り合いの日系三世にDVDを送った。すると、彼の友人で二世部隊に詳しい別の三世が「本物のニュース映像と思うほどリアルだ!」と感嘆したそうだ。「でも、実際の二世兵士より年齢が高い」という的確なコメントもくれた。そうなのだ、リエナクトしてい…
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『脱アイデンティティ』 一貫性ではなく変化することで維持されるなにか

書評のしにくい本だ。それはアイデンティティという概念の曖昧さに起因する。アジア系アメリカ研究や移民研究にはアイデンティティについての議論は必須だが、これほどその使われ方の文脈に依存する用語もない。また、研究者の側の個人的なアイデンティティも問われるのが社会科学である。アイデンティティを考えることは、研究者のアイデンティティを再考…
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アジア系アメリカ文学の裏街道 ― 『ディクテ』

白旗をあげるわけではないが、僕には歯が立たない。でも、何かを書かなければ気持ちが収まらない。テレサ・ハッキョン・チャの『ディクテ』は、著者の背景を知らないと混乱をきたす種類の作品だが背景を聞いたから混沌から逃れられると思ったら大間違いだ。難解といえばこれほど難解な作品もないだろう。カレン・テイ・ヤマシタも難解だが、ヤマシタがトラ…
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ローソン・フサオ・イナダ ― ウエッブサイト「風」より

ブログ主の畏友である須藤達也さんが「風」というサイトに連載を持っている。このシリーズのタイトルは「日系アメリカ人と日本人」。このサイトを運営しているジャーナリストの川井龍介さんがジョン・オカダと"No-No Boy"を追いかけている関係もあり、充実した読み物になっているが、今回アップされた第4回 ローソン・フサオ・イナダ~収容所…
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熱帯雨林の彼方へ ― 彷徨うフリークス

カレン・テイ・ヤマシタのデビュー作。わけがわからないプロットと、フリーキーな登場人物あるいは登場動物あるいは登場物質あるいは登場物体により読者は翻弄される。以前にも述べたが、まさに、ヤマシタ得意の「嘘ですらない世界」を描いた長編小説である。うがっていえば、「小説ですらない小説」と呼んでもいいが、マジカル・リアリズムという範疇に回…
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Circle K Cycles - カレン・てい・山下のルール

長編を読む時間も力もないので、比較的ページ数の少ない、イラストや写真の多いカレン・テイ・ヤマシタの戯作的傑作、いやケッサク小説・・かエッセイかわからない(わからなくてよい)作品を再読してみた。買った時に読み始めたのだが、途中でわけがわからなくなり、放り出していた。実は今読んでもどこから説明したらいいのかが難しい・・・というより不…
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シャム双生児と黄色人種-メタファーの不条理性を通して語る文化的専有とステレオタイプの脱構築

最近は読まなくなってしまったけれど、かつて僕は筒井康隆のファンだった。ハチャメチャなスラップスティック、本格的SFになりそうでならないSF、こんなことを書いて大丈夫か?という黒いパロディー、そして、少年少女を胸キュン(表現が古いが)にさせたジュブナイルものまで、筒井康隆ワールドは時間を超える。最近もNHKで七瀬シリーズがドラマ化…
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「嘘ですらない」ヤマシタの世界 ― AALAフォーラム2009

英米文学研究というのは、誤解を恐れずに言えば、自分独自の解釈をひねりだす技術である。それが例えその作品を書いた作家が想像だにしなかった解釈であっても問題はない。そして、その解釈が独創的であればあるほど誉められるようだ。無論、荒唐無稽な議論では説得力に欠けるが、とにかく、「私はこう読んだし、それが正しいのだ」と言い切ることが文学研…
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スパム・ムスビは日系アメリカ人のソウルフード ― 庭師マス・アライの事件簿

『ガサガサ・ガール』に続く、老いた被爆者の帰米二世庭師マス・アライが活躍する推理小説だが、今回も日系アメリカ人色と日系アメリカ人食(笑)の濃い描写に笑ってしまう。スパムむすび。それは僕も70年代のハワイで初めて見た日系アメリカ風オニギリだが、スパムは沖縄でも多く食べられている。そう、今回のキーワードは沖縄だ。事件には三線(スネー…
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待望の邦訳 - ヒサエ・ヤマモトを探訪する

ヒサエ・ヤマモトのSeventeen Syllablesを容さんの研究室で見かけたのは70年代末か80年代の初めで、その頃に読んだ記憶はあるものの、大きな衝撃を受けたかというと、そうでもなかった。文学に疎い超未熟者の学生には荷が重すぎたのかもしれない。ところが、後にヒサエ・ヤマモトの作品研究が進み、いろんな研究者の発表や論文を眼…
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GASA - GASA GIRL by Naomi Hirahara (2005)

やらなきゃならないことがあるんだけれど、そっちのほうに気が向かない。教則DVDを見ながらフェンダーのジャズベースを触ったら指先が痛い。慣れないことはするもんじゃない。ウン十年前はもすこし弾けたと思うのだが、もはや老いぼれだ。しかし、突然、ニューヨーク--そこはカリフォルニアとは違う--に住む娘から呼ばれ、殺人事件に巻き込まれる7…
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『キムチ』 ウーク・チャング著 (青土社) 2007

あまりにも切ない 自分をとりもどす物語 キムチなしで一ヵ月も過ごすと、僕の血は騒ぎ出し、この辛いサラダを求めて叛乱を起こし始める。韓国人として横浜で生まれ、カナダで育ち、パリに流れ、日本で唯一のものを見つけた。ディアスポラを生きる男のまったく新しい韓流小説。 学生として日本にもどってきた男。 男は韓国人として横浜で生ま…
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『その名にちなんで』 The Namesake

作家ジュンパ・ラヒリについては、入っている研究会で何度も議論されているし、『その名にちなんで』は翻訳も出ている。しかしまだ読んでいない。新年早々、自分の不勉強を思い知らされるが、せめて映画は観ておこうと今朝決めた。で、大阪梅田のLOFTにある映画館へ。 映像の魔力なのか、インドそれ自体の魔力なのか、たぶんその両方なのだろう…
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さのぱがん! めりけんじゃっぷとしての谷譲次

新年おめでとうございます。今年もこの拙いブログにおつきあいいただければ幸いです。さて、谷譲次のことがどうにも気になり、某オークションで『踊る地平線 めりけんじゃっぷ 長谷川海太郎伝』室謙二著(晶文社)1985をゲット。早速目を走らせているところなのだが、予想通り、滅法面白い。無論、めりけんじゃっぷ物の小説のいかがわしさと同様、谷…
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国家に抗う国内亡命者 佐藤優『国家の罠』(文庫版)

『私のマルクス』を学生時代の後輩に推薦したら、既に僕の書いたブログ記事をチェックしていて、「ほっほっほと笑いながら読んだ」というメールが返ってきた。おまけに、この後輩は学生時代に佐藤優を見かけたことがあるという。見かけただけでなくて、会ったこともあるらしいのだが、記憶がはっきりしないらしい。それに続けて「以前に『国家の罠』を読ん…
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