テーマ:書評

アジア系アメリカ運動再考 - イエロー・パワーの時代

ちょっと必要があって入手した本。出版ホヤホヤの研究書で、最近の出来事までフォローされているのがありがたい。アジア系アメリカ運動とは、60年代から70年代のアジア系アメリカ人による反体制運動のこと。本書は、黒人の公民権運動に触発されたアジア系アメリカ人やその社会が多数派エスタブリッシュメントに対して抵抗した時代を「再考」しようとい…
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『すばらしい墜落』 ハ・ジン 著 / 悲劇は喜劇、喜劇は悲劇

2009年に出版されたハ・ジンの短編集"A GOOD FALL"の邦訳書がこれ。苦渋に満ちた、しかし、悲喜劇のような12の物語が収められている。場所はニューヨークのチャイナタウン「フラッシング」。大学院生や高学歴の登場人物が多いが、ブルーカラーや僧侶、中国から出てきた老母なども重要な役割を果たしている。中国生まれもいれば米国生ま…
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あの日、パナマホテルで / 「いたいけ」な恋

シアトルの航空会社を早期退職し病の妻を看取ったヘンリーは、絶望の淵にいた。そんなとき、戦時中収容所に移送されることになった日系人が密かに運び込んだ荷物が地下から40年ぶりに発見され、騒然としているホテル横を通りかかる。目に飛び込んできた鯉の絵の傘…ケイコのだ!脳裡には、戦争のため離ればなれになった初恋の日系少女の面影が鮮やかに蘇…
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「動く」アメリカ史 - アジア系アメリカ人と「移動」の映画 by ダレル・ハマモト

アジア系アメリカ人たちが自分たちのメディアを持つのは1980年代初頭だとハマモト教授(UC Davis)のこの論文に書いてある。むろん、移民一世たちが母国語で作った新聞はあったが、ここでの<アジア系アメリカのメディア>とは、二世以降の世代が、英語で、自分たちが作品を制作発表するための自前のメディアのことだ。 例えば、LAの…
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アメリカ音楽史 ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで

ロック、ジャズ、ブルース、ファンク、ヒップホップ…音楽シーンの中心であり続けたそれらのサウンドは、十九世紀以来の、他者を擬装するという欲望のもとに奏でられ、語られてきた。アメリカ近現代における政治・社会・文化のダイナミズムのもとその“歴史”をとらえなおし、白人/黒人という枠組みをも乗り越えようとする、真摯にして挑戦的な論考。(本…
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わたしたちは何故小説を読むのか?/ 『わたしを離さないで』

この、陰鬱で、Gloomyで、更に高温多湿で台風まで来る2011年の7月に、よりにもよってカズオ・イシグロの長編小説『わたしを離さないで』を読むことはない。実際、読み進めてすぐ、「あ、こらアカンわ」と、放り出しそうになったし、これを友人に勧める気にはならない。しかし、ある理由で、最後まで読んだ。そして疲れた。 確かにこれは…
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『ハワイの辛抱人』 - 「ハワイ日本語」やピジン英語が話された時間と空間

泥縄式で、ハワイ移民関係の本を漁っている。これはライフ・ヒストリー研究、いわゆる、質的研究というジャンルに入るもの。明治25年福島県生まれで、14歳のときにハワイに出稼ぎ移民した渋谷正六氏と著者との「共作」だ。「聞き書き」ではない、と著者が明言しているので、そうではないのだろうが、私にはなんともいえない。方法論っていうのはややこ…
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『創られた「日本の心」神話』 「演歌」という文化

演歌を聴いたことのない中国系アメリカ人に英語で演歌を説明できなかったという思い出がある。なんでそんな話題になったのか覚えていないが、相手はミュージシャンじゃないし、日本の大衆音楽も知らない。真っ青になった。音楽を言葉で説明するのは不可能だと言ってしまえばそれでお終いだ。しかし、音楽それ自体ではなく、どんな背景を持つ音楽かくらいは…
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「巡検」の成果 ― 敦賀と杉原千畝と絵本

大天災+大人災の前に、こころが、「嶋々や千々にくだけて夏の海」(芭蕉)の日々だが、当ブログは別に「自粛」はしない。今日もブログ主の「うだ話」を聞いていただく。不謹慎だと感じた方は別のサイトに移動して下さい。あ、「うだ話」というのは大阪弁で「意味のないことを喋る」という意味です。 先日、福井県の敦賀に行った。その前の長浜から…
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歌う国民 ― 近代化と「国民づくり」と歌

『歌う国民』唱歌、校歌、うたごえ 渡辺裕 著 という本を半分読んだところだが、なかなか面白い。かつて、音楽は芸術ではなく極めて実際的で身体的なツールであったこと、唱歌と童謡との微妙な関係、明治以降の近代化と西洋音楽、日本の伝統とは何か、等々、歌にこだわることで私たちが知らなかった「古くて新しい景色」が次々と見えてくる。くどさが気…
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ヒロシ・カシワギの詩集 OCEAN BEACH

2009年の暮れにご子息のSojiさんから手渡しでいただいた詩集。既に発表された作品も収められているるが、違和感は全然ない。ヒロシ・カシワギ(Hiroshi Kashiwagi)という名前を知ったのは○十年前の学生時代のこと。アジア系アメリカ人が出していた雑誌に詩が載っていて、それは、日本の現代詩のような難解なものではなく、「と…
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布哇日本人発展史 ― 資料に圧倒される

これは、大正4年(1915年)に出た本。966ページもある大著だ。書名の通り、ハワイに住む日本人の諸相を綿密に記述した百科事典のような本。むろん、既に二世は生まれていたものの、社会で活躍するには年齢が幼すぎた。本書は、当時の日系社会をリードしていた移民第一世代の日本人が、ハワイでどのような社会を形成しているか、どんなことをして生…
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HOWL: Allen Ginsberg - ビートニクスと朗読

ユズルさん(片桐ユズル)からビートニクスやらギンズバーグのことを聞いたかどうかは三昔前のことなので忘れてしまったが、手元にあるのは1959年に録音されたギンズバーグの自作詩朗読CDで、59年はちょうどユズルさんがフルブライトで渡米した年なのも偶然の一致か。実況とスタジオ録音があるが、実況のほうが妙な抑揚がなくていい。若い声のギン…
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真珠湾攻撃総隊長の回想 淵田美津雄自叙伝

このブログに何故この本が?と思われるかもしれないが、この、特異な人生を歩んだ真珠湾攻撃隊(海軍航空隊)の総隊長であり、自らも戦闘機に乗って指揮した人物は、単なる勇壮な軍人ではない。この本の書評は多く書かれている(ハードカバーは数年前に出ている)が、私が関心を持った部分を取り上げたひとは少ないと思う。 それは、敗戦後、淵田氏…
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衣乾したり 天の香具山 / リービ英雄と「言葉の杖」

『千々にくだけて』に感心した後、リービ英雄の著書とは離れていたが、今度出た『我的日本語』を、移動の間に、またたくまに3回以上読み返した。読むたびに付箋が増えていく。(笑)この本を読むために、空港へ早めに着き、がらんとした待合室でまた読んだ。なお、いつも付箋を持ち歩いているわけではない。仕事に必要なのでかばんに入れていたのが役に立…
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鴨川デルタじゃなくて出町の三角州 - 鴨川ホルモーの怪

これはズルい。京都で学生時代を過ごした読者なら泣いて喜ぶ小説だから。書名は知っていたけれど、奈良公園の鹿が喋るドラマくらいしか著者のことは知らなかった。先日、大学の後輩から「あれ、おもろいでっせ」と勧められ(彼は西宮出身の関西人)て文庫を買い求め、鞄に放り込んだ。 仕事から仕事への電車の中で読み出したら止まらなくなった。ま…
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好きの嵐 ― 現代詩とポピュラーミュージック

山本秀行さんの書いたものを目当てに手に入れたらケネス・レクスロスについて言及した論文がふたつも入っていて、「珍しいなぁ」とページをめくっていたのだが、途中で、「ああ、これは<好きの嵐>やな」と苦笑してしまった。それに、偉大な○○とか、名曲とか、そういう余計な修飾語が出てくるので、レクスロスやディランやレナード・コーエンが好きだと…
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ロバート・ブライ詩集 石のなかに涙を見るような気がする

『仕事!』という本を翻訳していた頃、突然、中山容さんがこちらを見て「○○さん、あのね、訳者あとがきの最初にさ、このロバート・ブライの詩を持ってこようとおもうんだけど、どうかねぇ」と口にした。 ロ・・・ロバート・ブライ・・誰ですかそれは、と戸惑う私。こっちは文学は門外漢で、ましてやアメリカ詩などほとんど知らない。でも、そんな…
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血塗られた雛人形 Blood Hina - 陪堂って何?

ナオミ・ヒラハラ女史の推理小説、そう、70歳を過ぎた二世の庭師、マス・アライが鋭い洞察力と庭師らしい観察眼で難事件を解決していくあのシリーズの最新作がこれだ。邦訳された作品については、このブログでも既に取り上げているので、興味のある方は検索してみて下さい。 で、これ(上写真)はヒラハラ女史から直接頂戴した出版前の宣伝用のコ…
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うつろ舟 ― 日系ブラジル文学とは?

「ブラジル文学界最長老の選集を編みましたのでお届けします。北米の移民小説とは違いがあるのでしょうか。いずれ感想をお聞かせ下さい」という便箋が挟まれて拙宅に届いたのが『うつろ舟』松井太郎著(松藾社)2010。「ブラジル日本人作家 松井太郎小説選」と表紙にあるように、ブラジル在住のベテラン作家、松井太郎氏(兵庫県神戸市生まれ。19歳…
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ポストコロニアリズムはそんなにたいしたものなのか?

うーん。この本、どうなんでしょう。著者の「勉強の成果」というのか、内容も盛りだくさんで、知らないことを知ることができる(特に一章と二章)本ではあるが、読後感がいまひとつスッキリしない。それは、著者が、植民地主義/支配と、被支配者とを分け、徹底して被支配者の側に立つことを指向しているからかもしれない。 まぁ、ポストコロニアリ…
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日系移民学習の理論と実践 - グローバル教育と多文化教育をつなぐ

450ページもある大冊。日系移民の歴史や社会や文化を日本人のこどもたちにどう教えるか、という課題に挑んだ、極めて実践的な手引き書である。副題が「グローバル教育と多文化教育をつなぐ」だから、移民が題材として適するのはわかる。多文化主義/多文化教育は、日本に来て生活している外国人との共生がテーマになることが多いが、日本から出て行った移民…
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男おひとりさま術 ― アンケートに答えればよかった

第1章 なにはともあれ、まず自立;第2章 自分のからだは自分で守る;第3章 どうなる老後のお金;第4章 今の家は終の棲家か;第5章 ありあまる時間をどう使う?;第6章 介護は突然やってくる。・・・と、考えられた構成の実用書であるが、どのページから読んでも勉強になる「読み物」としても面白い。 いや、「面白い」などと客観的にヒ…
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突出せず、目立たずに「頑張る」日本人移民や日系人、って?

さぁ、どこからでもかかってこい。(笑)今回も近年(2008年)に出版された「移民&日系人礼賛本」だ。タイトルが『故国を忘れず新天地を拓く―移民から見る近代日本』なので、横浜の海外移住資料館が再生産している一方的な移民像がちらつくが、中身を読むと、予想通りであった。著者は1977年から30年間、世界各地の日本人移民と日系人に会いに…
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「アイデンティティを喪失する余裕すらなかった」って、なんなの?

ブログ主がびっくりしているのは、最近になっても<日系二世モノ>のノンフィクションが書かれ出版されていることで、今秋放送予定のTBSの連続ドラマもその流れ(どんな流れだ?)なのかどうかわからないが、とにかく、本屋で『日本軍兵士になったアメリカ人たち―母国と戦った日系二世』(2010)とか『棄民たちの戦争―米軍日系人部隊の悲劇』(2…
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And more, much more than this, I did it my way

マージナル・マン(marginal man)を辞書で調べると「文化の異なる複数の集団に属し、そのいずれにも完全には所属することができず、それぞれの集団の境界にいる人。境界人。周辺人。」とある。むかし、大学の授業かなにかで習った記憶がある。それほど古い社会学の概念だが、手元に、日系人、特に帰米二世は、マージナル・マンもしくはマージ…
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晶文社50周年 ― ワンダーランドの本たち

大阪の某デパートにある大きめの書店を徘徊していたら晶文社の懐かしい本たちの特設コーナーが・・。なんでも、【晶文社50周年フェア】だという。絶版か品切の本が並んでいたもので、何年も会っていない旧友とばったり出くわしたような気がしたし、晶文社の本を手にとっていた頃にフラッシュ・バックした、ような気もした。 個人的な感想だけれど…
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「スパムむすび」再び ― Nichi Bei Weekly, Dec. 2009

上の画像は西海岸の友人がお土産にくれたNichi Bei Weekly(日米ウイークリー紙)の一面である。去年に廃刊したサンフランシスコの日系新聞「日米タイムズ紙」が週刊の新聞として蘇った。日米タイムスとの違いは週刊になったことと日本語紙面がないことだろう。但し、日本語が使われている新聞広告はある。 ところで、偶然だが、こ…
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80年代の日系アメリカ運動を読む / 「日系―みはり」

古い資料で恐縮だがこんなのを持っている人は日本には少ないだろうからなにかの役に立つかもしれない。これは1970年代から80年代にかけ、アジア系アメリカ人意識が高まってきた頃に、若い日系アメリカ人を中心に組織されたLAとSFの団体*が一緒になって発行していたNIKKEI-SENTINELという新聞(年に6回出ていた隔月紙のはずだ)…
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ECHOES FROM GOLD MOUNTAIN - 金山に木霊するもの

"キングストンの『アメリカの中国人』(1980)は中国人移民が歩んだ歴史と場所についての記憶の物語である。この物語を特徴付けているのが、当時の中国人移民の「アメリカン・ドリーム」であった「金山」神話であり、一方でその夢の実現に立ちはだかったアメリカでの人種差別の現実である。1890年、フロンティアの消滅が宣言されたが、それ以前に…
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