「巡検」の成果 ― 敦賀と杉原千畝と絵本

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大天災+大人災の前に、こころが、「嶋々や千々にくだけて夏の海」(芭蕉)の日々だが、当ブログは別に「自粛」はしない。今日もブログ主の「うだ話」を聞いていただく。不謹慎だと感じた方は別のサイトに移動して下さい。あ、「うだ話」というのは大阪弁で「意味のないことを喋る」という意味です。

先日、福井県の敦賀に行った。その前の長浜からツアーガイド(笑)をつとめていただいたK先生のおかげで、敦賀市博物館の学芸員さんの案内付きという贅沢な「巡検」(「巡検」とは地理学者が歩きながら調査することを指す言葉。もともとは軍隊用語らしい)で、敦賀市博物館も、その建物を含め、興味深かった。福井県は嶺北と嶺南で歴史も文化も異なり、敦賀と若狭でさえ違うとのだという。よそ者にはトリビアに見えることも、当事者にとっては重大なのだろう。敦賀ヨーロッパ軒でソースカツ丼を食し、謎の料理「ジクセリ」の由来に頭を悩ました後、私たちは、敦賀港の端にある、かつて当地が国際港として機能していたことを記録する小さな博物館に向かう。

それは人道の港 敦賀ムゼウムという、昔は別荘だった洋風の建物を利用した施設で、「人道の港」という名が表すように、外国からの難民や亡命者が上陸した港としての敦賀港を説明している。難民とは、ポーランドからの難民であり、杉原千畝が通過ビザを発給したユダヤ人たちのことだ。

杉原千畝については書籍も出され、ドラマも作られているので、ここでは説明しない。検索してみて下さい。それで、この「ムゼウム」には杉原千畝関係の本が何冊か置かれていたのだが、ケン・モチズキ&ドム・リーの絵本がなかった。それを学芸員のTさんに言うと、「そんな本があるんですか」という反応。

「いっちょかみ」の性質を持つ軽薄なブログ主は、Tさんにその本(上写真)を一冊進呈することに決めた。シアトルのKen Mochizukiとは面識があるし、なにより、彼の書く絵本―何種類も出ている―は上質だ。東海岸に住むコリアン・アメリカンの画家/イラストレーター、Dom Leeも巧い。セピア色を基調とする画風が物語とよく調和している。

このPassage to Freedom - The Sugihara Stotyは、杉原千畝の長男、杉原弘樹の眼を通して、当時の状況とユダヤ人たちへの杉原とその家族の対応を描いている。杉原弘樹氏が英訳した本を下敷きにしているのだろうが、子供むけの本を書くのは大人向けの小説より難しい(モチズキがブログ主にこう言った)のであり、優しい表現で物語の核心を伝えなければならないし、絵との親和性も必要だ。

そう考えると、この絵本は、よくできている。杉原千畝が、あの時代のあの状況下で、外務省の意向に従わず、なぜたくさんのビザ(「命のビザ」とも呼ばれる)を発給したのかを説明するには、分厚い本でも足りない。それをわずか30ページほどの絵本(絵本だから半分は絵だ)にまとめることが如何に難しいか。

最近、モチズキと交わしたメールで、この絵本が出版されてから(1997年に出ている)十余年を経ても、彼が杉原千畝に関心を持っていることがわかった。こちらは、浅い知識しかないので、的確な返事ができないけれど、杉原千畝が、迫害を逃れようとしたユダヤ人にいったい幾つのビザを発給したかも、正確なところはわからないらしい。ケンの調査だと約4,500らしいが、6,000前後という数字もある。いずれにせよ、某大な数字だ。杉原千畝は手書きで黙々とこの作業を行った。毎日毎日、朝から晩まで、一日に300枚書いたという。

後年、ビザの発給が原因で、杉原千畝は外務省を去る(事実上の解雇)ことになるわけだが、そういうリスクをわかりつつも信念を貫くその姿勢が読むひとの心を揺さぶる。杉原千畝は、70歳を過ぎても、貿易会社の社員としてモスクワで仕事をしていた。数ヶ国語を操り、特にロシア語に堪能であったという。

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この記事へのコメント

蒼い雪
2011年03月28日 22:41
杉原さんといえば、いつもその後の外務省の対応が気になります。今、これほどまで国際的にも評価されている杉原さんに対して、日本国はどのような対応をされてるのでしょうか。またご存知だったら教えてください。イチロー選手に与えようとした国民栄誉賞といい、地元では借金ばっかりしているうさん臭い人間にも、外務大臣なんとか勲章とやらが贈られたり、アメリカが育てた日本人ノーベル賞受賞者に対する騒ぎぶりといい、日本国の褒章制度と日本人としての”誇り”とは何ぞや、に非常に興味があります。この杉原さんに関して、日本人は日本人として”誇り”に思うのでしょうか???
2011年04月04日 23:26
「誇りに思う」以前に「知らない」と思います。残念ながら。杉原については論争もあり、批判する人もいるらしいです。

国がどう対応しているかまではわかりませんが、外務省はいまだに杉原に冷たいそうです。国の命令に従うか、自分の信念に忠実に行動するか・・

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