ロバート・ブライ詩集 石のなかに涙を見るような気がする

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『仕事!』という本を翻訳していた頃、突然、中山容さんがこちらを見て「○○さん、あのね、訳者あとがきの最初にさ、このロバート・ブライの詩を持ってこようとおもうんだけど、どうかねぇ」と口にした。

ロ・・・ロバート・ブライ・・誰ですかそれは、と戸惑う私。こっちは文学は門外漢で、ましてやアメリカ詩などほとんど知らない。でも、そんなことはおかまいなしの容さんは「この、「石のなかに涙を見るような・・」というところ、いいと思わない?」と続けるのだ。あれからいったい何年たったのだろうか。いま、ようやくその部分の原文を見つけた。

僕と容さんとの会話はいつもこんな調子で、コミュニケーションが取れているのかいないのかもわからないまま延々と続き、気がつくと数時間経つことも少なくなかった。ほんやら洞でバイトをしていた友人が容さんと僕を見て呆れていた。コーヒーとタバコを愛した容さん。僕は紅茶派だったが、そんなことはどうでもいい。

ジョン・オカダやヒサエ・ヤマモトは遡上に上がったけれど、ボブ・ディランの話題はほとんどなかった。詩人については、ある時は明治学院大学の卒論のテーマだったというエミリー・ディッキンソンだったり、ある時はウィリアム・カーロス・ウィリアムスだったり、ユズルさんと共訳をしたローレンス・ファーリンゲティだったりした。ウォーレス・スティーブンスもあったかもしれない。エズラ・パウンドは難しかった。

容さんがフルブライト留学生でサンフランシスコに住んでいた時、フィルモア・ウエストでカントリー・ジョー&ザ・フィッシュを見た話とか、シティ・ライツ・ブックストアでのビート詩人たちの朗読会の話は面白かったが、細かいことは覚えていない。ただ、容さんが熱っぽく話し出すと誰も止められなかった。容さんのファンは日本人にも外国人にも多かった。ジョン・オカダの実弟、フランク・オカダも、UCLAのユージ・イチオカ先生も、日本滞在中のデイビッド・ムラも容さんを慕っていた。

ロバート・ブライの訳詩集(上)が出ている。金関寿夫と谷川俊太郎のふたりはロバート・ブライの世界にぴったりで、とても読みやすい。「ユニークな田園神秘主義詩人」と帯に書いてあるが、神秘は感じなかった。即物的で、しかし、書いていることは深い。単純なようで、一筋縄ではいかない。

容さんが『仕事!』に引用したのは下記の一節だ。

POEM AGAINST RICH

Each day I live, each day the sea of light

Rises, I seem to see

The tear inside the stone


金関+谷川の訳と容さんの訳とは勿論異なるが・・

毎日を生きぬき、光の海がおしよせるごとに、

私は石のなかに涙を見るような気がする


という容さんの訳が僕は好きだ。

スタッズ・ターケルの聞き書き本にふさわしい。

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