血塗られた雛人形 Blood Hina - 陪堂って何?

画像


ナオミ・ヒラハラ女史の推理小説、そう、70歳を過ぎた二世の庭師、マス・アライが鋭い洞察力と庭師らしい観察眼で難事件を解決していくあのシリーズの最新作がこれだ。邦訳された作品については、このブログでも既に取り上げているので、興味のある方は検索してみて下さい。

で、これ(上写真)はヒラハラ女史から直接頂戴した出版前の宣伝用のコピーで、そのままにしておいたら既に出版されたらしい。せっかく手渡しでいただいた本をそのままにしておくのは申し訳ないので、電子辞書を傍らに置いて読み始めたらこれが相変わらず面白い。実はまだ全15章のうち4章までしか読み進めていないが、既に事件は起きている。しかし、殺人事件ではない。ただ、雛祭りのお雛様が何者かに盗まれただけなのだが、この雛人形が実は単なる人形ではなさそうなのだ。

ヒラハラ女史の文章は、単に英語の中に日系人英語が挟まるという安直なエキゾチズムではない。その人物やその場にふさわしい英単語を使い分け、登場人物の微妙な感情のひだを巧みに読者に「ほのめかす」のだ。マス・アライは戦時中は広島に住み、被爆した帰米二世の老人という設定になっている。今作は、広島時代を共にした(被爆者でもある)マス・アライの親友、ハルオのいささか遅すぎる再婚に際し、新郎のBest man(介添人)を嫌々引き受けるところから始まる。

さて、読んでいないことは書けないから、気がついたことだけ書くと、日本人がヒラハラ女史の小説を原書で読むときには、英和辞典だけでなく国語辞典も必要だということで、例えば、無礼な言葉を吐く或る女性に対してマス・アライが不愉快になるシーンで、The girl was confusing Mas. And upsetting him as well. Never mind what Mas truly thought, what right did this hoito, begger, have to judge her elders' actions and use profanity on top of that? のhoitoが、僕にはサッパリ理解できなかった。(笑)

で、広辞苑を見たら、「ほいと」とは「陪堂・乞児・乞食」のことだとある。「ほいとう」とも発音する。ヒラハラ女史もbeggerと英語で説明しているので読み飛ばしてもいいのだが、こちらは、一応、日本人なので、意味のわからない日本語が理解できないのは悔しいのだ。(笑)ヒラハラ女史の家では、特にご両親の世代において、日常語として「ほいと」あるいは「ほいとう」という言葉が使われていたのだろうか。いや、使われていたからこそマス・アライの心情を表現するときに「ほいと」を用いたのだろう。

実は、マス・アライがhoitoと呼ぶ人物が、この物語の核心のようなのだが、これは後のお楽しみだ。

このブログに立ち寄って下さる皆さんで、乞食(という言葉も死語か)などの「施しを受ける人」のことを「ほいと」「ほいとう」という単語で表現する方がおられたらコメント下さい。ヒラハラ女史のルーツは広島県だが、広島県ではどうなんだろう。うちのルーツも広島県だが聞いたことがない。

ああああ、「ほいと」「ほいとう」が気になって仕方がない。小説の筋とはほとんど関係ないトリビアな疑問なのだが、「英語を母語とする読者をターゲットにした英語で書かれた小説なのに日本語の単語で悩まされる」というのが、いかにも、日系アメリカなのである。

追記:本の表紙が気色悪かったのでヒラハラ女史にそう言ったら、彼女もこういう装丁は嫌だとのこと。しかし、出版社は、日本文化をおどろおどろしく強調しないと本が売れないと考えるので、こんなデザインになったそうだ。なんか、日本の雛人形というより中国の人形みたいに見える。怖いよ~~~~~

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

Hawkeye
2010年08月29日 16:06
広島での中・高時代に、この「ほいと」は古い広島人だけでなく同級生からもよく聞きました。「乞食・浮浪者」などの意味の他に、ニュアンスとしては「愚か者・馬鹿な奴」といった蔑む表現であったと記憶します。
戦前の広島弁がそのまま使われていた布哇や羅府の日系人社会では当然のように使われたと思います。
2010年08月29日 19:28
>大尉殿

そうだ、大尉殿は広島県でしたね。コメントに感謝します。「ほいと」に含まれる「愚か者」「馬鹿な奴」というニュアンスが小説でも生かされていると思います。

ヒラハラ女史は日本語も堪能ですので、彼女の小説には一世や二世が実際に使った「移民社会での日本語」がたくさん出てきます。それらの日本語の中には、広島県などの移民を多く送り出した地域に特有の単語が散見されます。
Hawkeye
2010年08月30日 01:16
ブログ主のご紹介でヒラハラ女史のマス・アライシリーズは二冊読みましたが、面白いですね。

移民県である広島・山口・熊本・沖縄などの古い言葉は日系人社会に色濃く残っていますが、ヒラハラ女史(オキナワンの三世?)はそれを上手く小説に使っているのが良く判ります。
2010年09月02日 21:57
ヒラハラ女史のお父上は米国生まれの帰米二世で被爆者。お母上は広島出身の一世です。ご本人は「私は2.5世です」と微笑んでおられました。ヒラハラ女史の日本語能力とジャーナリストとしてのキャリアが推理小説という形式で生きていると思います。

この記事へのトラックバック

  • プラダ 財布

    Excerpt: 血塗られた雛人形 Blood Hina - 陪堂って何? asianimprovのアジア系アメリカ雑記帖/ウェブリブログ Weblog: プラダ 財布 racked: 2013-07-07 01:31
  • VISVIM サンダル

    Excerpt: 血塗られた雛人形 Blood Hina - 陪堂って何? asianimprovのアジア系アメリカ雑記帖/ウェブリブログ Weblog: VISVIM サンダル racked: 2013-07-09 02:50