二世部隊 ― 感情的にならずに事実を追いかけること



ブログのおかげで数年前に知り合ったのがリエナクトをするひとたちで、その出来映えに感心した僕は、知り合いの日系三世にDVDを送った。すると、彼の友人で二世部隊に詳しい別の三世が「本物のニュース映像と思うほどリアルだ!」と感嘆したそうだ。「でも、実際の二世兵士より年齢が高い」という的確なコメントもくれた。そうなのだ、リエナクトしている皆さんは30代以上だろう。実際の二世兵士は10代から20代が多かった。なお、上の映像は数年前に滋賀県のスキー場で撮影されたものだ。1944年のイタリア戦線ではない。念のため。(笑)

リエナクトとは、当時の衣服、装備、武器、車両、兵士の態度、行軍、戦闘など、ありとあらゆることを再現する趣味である。そして、日本人が、様々な他国の軍隊をリエナクトする中で、最も人気の高いもののひとつが二世部隊、要するに、100大隊/442部隊なのである。なお、上の映像が制作される過程で僕も少しお手伝いをした。流れる音楽はLAのSoji Kashiwagiが主宰する「鶴の恩返し劇団」が作ったCDのものを利用させていただいている。映像制作者にこの曲を紹介したのは僕だ。勇壮な442nd Fight Songのおかげで映像に迫力が加わっている。

画像


映像と同時にお勧めしたいのは、『ブリエアの解放者たち』ドウス昌代著、で、二世部隊関係で日本人が著した本は幾つもあるけれど、感情的にならずに事実を追いかけているという点で、この本は群を抜いている。特に、ハワイ出身者と本土出身者とのトラブルや、訓練の様子、地元との交流、兵士の日常生活まで、米国人には書きにくいネガティブな部分を描写しているところを僕は高く評価したい。反対に、「大和魂」という言葉で二世部隊を感情的に、かつ、二世の日本人性を誇張して説明する本には違和感を禁じ得ない。

日系アメリカ人だけで編成された部隊が欧州戦線で勇猛果敢に戦い、おびただしい死傷者を出し、多くの勲章を得たという事実を知ると、僕も興奮する。このブログにもコメントを寄せてくれるHawkeye大尉のサイトにはこうある。

その頃に、ハワイ大学の購買部で「Unlikely Liberators」という一冊の本を手に入れた。「二世部隊」である有名な米陸軍第442連隊とその兄貴分第100大隊の設立経緯と欧州での戦闘、特に独軍占領下のフランス北東部にある山間の小都市ブリュエラの解放、そして有名なテキサス大隊を救出するエピソードなどが書かれてあるのだが、この本は、ドウス昌代さんという日本人が日本語で書いて日本で文藝春秋社から出版した「ブリエアの解放者たち」という本の英訳本だったのである。私が知らなかっただけで、日本ではとっくに立派な「二世部隊」の研究書が出版されていたのである。私の好奇心とミリタリーマニアの血と、不思議にも日本人としての血が一気にたぎった。

僕はミリタリーマニアではないけれど、二世部隊と出会ったときに感じたことはHawkeye大尉とほぼ同じだ。第二次大戦の米軍兵士なのに、それが日系二世だという歴史の皮肉/現実に驚き、そして、その複雑な立場を理解するために想像力を動員し、本を読み、写真集まで見た。しかし、所詮、こっちは戦後生まれの日本人である。戦争という不条理を知らない者に二世部隊が語れるのか。

先日の日本移民学会で、会長の飯野正子先生は、その講演の中で、「私は長く日系カナダ人や日系アメリカ人を研究してきましたが、日系人から<あなたたち日本人に我々の経験が理解できるのか?>と何度も言われました」と正直に語っておられた。また、飯野先生は「日本人が日系人を研究するのは暴力的である」とも言われた。「暴力的」というのは、「相手の心を傷つける」という意味だろう。そう、「日本人だから日系人を理解できる」なんてのは真っ赤な嘘なのだ。

飯野正子先生(津田塾大学学長)ですらそうなのだから、僕なんかが甘っちょろいことを書けるわけがない。だから、映像と本を紹介するだけにしたい。

なお、日本人監督が撮った「442」というドキュメンタリー映画が完成したらしい。日本人としての視点が生み出せているのかが問題だろう。でなければ、「暴力的」になる。そういう危うさ/危険性をわかって制作しているのならいいが・・。映画が「国家に対する忠誠と人種差別に対する勝利の物語」に回収されていたらつまらない。そういう言説は聞き飽きた。

登場人物にフランク・エミの名前があるが、ハートマウンテン収容所の徴兵拒否者(ドラフト・レジスターズ)の代表格である彼が442部隊についてどう語っているかも興味深い。

最後に、二世部隊についてはHawkeye大尉の野戦病院に掲載されている文章が最も優れている。本にするほど長くはないが、ツボを押さえているし、バランスも取れている。ビジネスマンとして何度もハワイを訪れている大尉殿の経験が生きている。

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この記事へのコメント

Hawkeye
2010年08月01日 23:58
突然拙文にお褒めをいただき恐縮に存じます。
まだ未完の物語ですが、まだ再出発できずに居ることに身も縮む重いです(汗)。
じきに「毎日が日曜日に」なりますので、その節には二世部隊を元気に再進軍させたいと思っております。
2010年08月02日 23:41
いえいえ。LAの友達から「日本人の映画監督が442部隊のドキュメンタリー映画を制作した」というニュースが届き、それがきっかけで今回の記事を書きました。

大尉殿のサイトは、情報量だけでなく、軍事関係が確かなので読み応えがあります。戦争には反対ですが、だからといって軍事から目を背けてはいけない。軍事と人間社会の歴史とは切り離せません。

Hawkeye大尉が率いる「二世部隊」の再進軍を待っています。(笑)
ハウプマン
2010年08月04日 15:30
 その節は、楽曲のご提供をいただき、ありがとうございました。おかげで、映像そのもののクオリティがぐっと上がりました。日本人のリエナクトは、日本軍か日系二世部隊が最もふさわしいと思います。
IKEGAMI
2010年08月04日 22:30
初めてHawkeye大尉のサイトを覗かせていただきました。
素晴らしい思考の積み重ねの記録です。こういう作業をコツコツとやっていらっしゃる方がいると思うと元気づけられます。また、asianさんの紹介文も素晴らしい!
犬のことばかり書いてちゃいけないなあ、と反省させられました(笑)。
もう少しじっくりと読んで、またコメントさせていただきます。
ありがとう!
2010年08月05日 00:43
IKEGAMIさん

池上さんが愛犬たちに接する時の愛情の深さにはいつも感心しております。動物が苦手な――但し、ニワトリの習性には少し詳しいですが(笑)――僕ですが、「犬とともに生きる」ことの素晴らしさは想像できます。

Hawkeye大尉の"Hawkeye"は、あの皮肉の効いた秀作映画「マッシュ」に出てくるドクターのニックネームに由来しますが、大尉殿の、ハリー・ニルソンから二世部隊までカバーできる守備範囲の広さと、ミリタリー関係についての知識の深さは半端ではありません。

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  • プラダ メンズ

    Excerpt: 二世部隊 ― 感情的にならずに事実を追いかけること asianimprovのアジア系アメリカ雑記帖/ウェブリブログ Weblog: プラダ メンズ racked: 2013-07-08 15:38