スパム・ムスビは日系アメリカ人のソウルフード ― 庭師マス・アライの事件簿

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『ガサガサ・ガール』に続く、老いた被爆者の帰米二世庭師マス・アライが活躍する推理小説だが、今回も日系アメリカ人色と日系アメリカ人食(笑)の濃い描写に笑ってしまう。スパムむすび。それは僕も70年代のハワイで初めて見た日系アメリカ風オニギリだが、スパムは沖縄でも多く食べられている。そう、今回のキーワードは沖縄だ。事件には三線(スネークスキン三味線)と沖縄の悲しい歴史が関わっている。(これ以上書くとネタばれになるのでやめる)

ナオミ・ヒラハラ女史お得意の<全方位的日系アメリカ人小説>はますますエスカレートして、この『スネークスキン三味線』には、ハワイ、沖縄、収容所、ベトナム戦争、そして知られざる日系ペルー人史なども織り込まれている。これほど盛りだくさんでエスニックな探偵小説もないだろう。何故日系ペルー人が、と思う人は物語の現場がLAであることや日系アメリカ人と日系ペルー人との複雑な関係について思いを巡らせてほしい。

日系アメリカについての予備知識のない読者には、様々な歴史や随所に挿入される「日系人日本語」は新鮮だろうし、予備知識の多少ある読者にとっても時折不意打ちを食らわせるパンチの効いたストーリー展開になっている。胸の空くようなどんでん返しを期待されると困るが、日系アメリカ人、特にワーキングクラスの二世の心情を知りたい人にはお勧めしたい一冊だ。

しかし、主人公のマス・アライが嘆くように、二世たちがたむろしていた場所が無くなっているのは寂しい。人間は社会なしには人間らしい生き方はできない。コミュニティーあっての人生ではないか。改造車を乗り回すEast LAの二世たちがかつて組織していた「ミカド」というカー・クラブについては、宮田信さんが貴重なルポを残しているが、ドライバーでしかドアが開けられない56年型フォードのピックアップ・トラックにこだわるマス・アライの心情にも、あの時代を生きた日系二世のこだわりが感じられる。

蛇足:もしマコが生きていて、このシリーズが映画化されたとしたら、主演は絶対マコだ。マコ自身は二世ではないが、背が低く、米日両語を操り、頑固者だが他人の話をよく聞く誰もが信頼する庭師が演じられる俳優はマコしかいない。今更ながら早すぎる死去が残念でならない。

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この記事へのコメント

chi-B
2009年04月17日 00:33
明るそうな本ですネ。スパムオニギリ、好きです。ハワイに行くと必ずABCディスカウント(してない)・ストアーで買ってしまいます。LAに居た頃、BETの音楽トーク番組が好きで見ていたのですが、番組のホストが時々スパムをやり玉にあげていて、多分○カリ・スエットのように名前から連想するものがあるからと思うのですが、「一体スパムってナンなんだ?俺たちブラックは絶対に食べないぞ~!」というジョークが出るたびに、美味しいのに!と小さな反抗をしていました。つい先日、深夜にふとTVを見ていたらマコさんが出ている映画がやっていました。主役は今が旬?のモックンで、中国の奥深くにビジネスで行っている内容でした。とても見たかったのですが、時間が遅すぎたので見るのを断念しました。マコさんは魅力的です。亡くなられたと思うたびに私も胸がキュんとします。先日LAの知り合いからTOYO'S CAMERAというドキュメンタリー映画のDVDが送られてきました。まだ半分しか見ていませんが、ふと、日系アメリカ人によるコメディー映画ってあるのかな?と思いました。
Hawkeye
2009年04月17日 01:41
面白そうな本ですね。「ガサガサ・ガール」と共にamazonで注文してしまいました。発売は第二弾でも、作品としてはこちらが第一作のようですね。

ハワイと沖縄は縁が深いですね。日系人組織とは別にオキナワンの組織もありますしね。取引先の要職にも名前から察するにオキナワンの方たちが大勢いらっしゃいました。

因みに私もスパムおにぎり大好きです。
ハワイに長滞在であった頃は、ホテルの朝食に飽きるとかならずスパムおにぎりを買って食べてました。
etchan
2009年04月17日 01:46
(しばらくおとなしくしようと思っていたのに、ふと通りすがったのが運のツキ・・・

あ、実はまさにこの本ですが、たまたま近所の○ックオフで100円で購入、3~4ヶ月前に読んだとこでしたw
一見ミーハーな少女小説みたいだし実際読みやすいのに、日系関係のあらゆる事実や側面が緻密に(それも押し付けがましくなく実にさらりと)描かれていて、改めて色々と考えさせられ勉強になりました。。なんだか「あさきゆめみし」を昔読んでいた時の気持ちを思い出しました(漫画なのに非常にタメになるw)。

マコさんマス・アライ説にもう一票!
あんなさゆりのおとうさん役が最後のイメージなんて、ちょっと残念なので・・・。

ちなみにビッグバチ(第1作目)は原本で読み終えたとこで、ガサガサはこれから注文。マリちゃんの青春時代に期待。一体、どんな順番で読んどるんじゃい。

横浜中華街の「悟空茶口巴(tea bar)」のスパムむすびのチリ味、お薦めですw
hana
2009年04月17日 02:43
これも読んでみたい本です。^^
>二世たちがたむろしていた場所が無くなっているのはさびしい

本当にそうですね。ベイエリアはそれでもあるほうだとは思いますが、サンフランシスコ・ジャパンセンター(日本町)やサンノゼでも、場所は限られているとは思います。私は彼らの話をそばでそっと聞いているのが好きです。
2009年04月17日 20:31
chi-Bさん

日系アメリカ人がスパム・ムスビならアフリカ系はフライド・チキンかな。こういうステレオタイプを嫌う人もいますが、主人公のマス・アライは実に美味そうにスパム・ムスビをほうばるのですね。(笑)ねっとりとしたご飯の上にスパムを置いて海苔で巻くのが俺たちの流儀だ、ってつぶやいて。

その映画は『中国の鳥人』。本ブログでも取り上げています。2006年の7月25日付けの記事です。

宮武東洋を扱った映画は東京都写真美術館で上映中とか。見に行きたいけど、DVDもあるのですね。日本語字幕は付いていますか?教えてくださ~い。m(_ _)m
2009年04月17日 20:33
Hawkeye大尉殿

「日系人組織とは別にオキナワンの組織もありますしね」

僕が初めて<沖縄に出会った>のはハワイでした。(苦笑)それまでは沖縄は日本の一部だろうと思ってた。恥ずかしいですが、事実です。
2009年04月17日 20:42
etchan

<日系関係のあらゆる事実や側面>をマス・アライを通して読者に提出している、そんな気がします。

日本語の挿入も見事で、「セワニナッタ」とか「バカタレ」とか「ヒョウバン」とか、日本人的な心情がこれらの日本語でさりげなく表現されている。

これらの日本語のオカシサがわかるのは、日本語ができる日系人と私たち日本人じゃないかな。だとすれば、もしかしたら、ナオミ・ヒラハラのターゲットにはアメリカ人だけでなく日本人も入っているのかもしれません。
2009年04月17日 20:44
「私は彼らの話をそばでそっと聞いているのが好きです。」

「そっと聞く」というのがいいですねえ。
chi-B
2009年04月18日 00:30
TOYO'S CAMERAは日本語字幕なしです。日本語でインタビューに答えて居られる時に英語の字幕が出ます。さっき続きを見てましたが、延々と音が大きめに流れるBGMがどうも私には重く感じてまた中断しています。(映像はとても興味深く綺麗です。)ジョージ・タケイさんも出ておられました。こういう映画は初めてですが、asianimprovさんのブログで予習がちょっとでも出来ていると見えて(w)、kibeiとかノー・ノー・ボーイなどのことがスッと解るのでした。感謝してご報告です♪ 過去記事の「中国の鳥人」見せて頂きました。かなり面白そうだったので、寝ないで見ればよかったです!嵐の後、ヤギに書類を食べられて、その後の亀の筏のシーンあたりで笑いながら断念しました。

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