『その名にちなんで』 The Namesake

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作家ジュンパ・ラヒリについては、入っている研究会で何度も議論されているし、『その名にちなんで』は翻訳も出ている。しかしまだ読んでいない。新年早々、自分の不勉強を思い知らされるが、せめて映画は観ておこうと今朝決めた。で、大阪梅田のLOFTにある映画館へ。

映像の魔力なのか、インドそれ自体の魔力なのか、たぶんその両方なのだろうが、コルコタ市街の喧噪やインドの家庭生活、音楽、結婚式などの描写が実に雄弁で、いつでもガスが使え、コインランドリーで洗濯できる生活が約束される「便利な米国的生活の貧しさ」との対比が侘びしい。これは最初の部分で、本筋はその後なのだが、ネタばれになるので紹介や説明は割愛する。公式サイトは下記。でも、できれば映画館で観られたし。損はしない作品です。

http://movies.foxjapan.com/sononani-chinande/

小説「その名にちなんで」はインド系アメリカ人女性作家ジュンパ・ラヒリの代表作のひとつで、この映画を監督したのもインドの女性監督である。女性性を強調するのは適当ではないかもしれないけれど、なにかデリケートなものが映像の背後で息づいている。展開はスピーディーとはいえないが、ひとつひとつの場面が過不足なく撮影+編集されていて無駄がない。長編小説をぴったり二時間にまとめたミーラー・ナーイル監督はただ者ではない。

この映画は、インド、米国、移民、文化摩擦、等々とともに、家族の絆とか男女の愛憎とか「名前」という、世界的で普遍的なものがテーマであり、アジア系アメリカという枠組みにとらわれる必要はないと思う。様々な見方や解釈が可能な作品は、豊かな作品である。この『その名にちなんで』は、インド人家族に絞った作り方になっている--白人でちゃんと描かれているのは主人公の恋人だけ--けれども、私たち東アジアに生きるにんげんも、様々な共感ができる、懐の深い映画に仕上がっている。たとえば、インドと米国との文化の違いを、靴を履く-脱ぐ、という日常の習慣の違いで示していたシーンに微笑したのは私だけではないだろう。

The Namesake 2006

追記:主人公の俳優は、Harold & Kumar Go to White Castleという、アジア系男性凸凹コンビが活躍する人気コメディー番組で有名。『その名にちなんで』ではシリアスな演技を見せる。

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この記事へのコメント

etchan
2008年01月05日 00:48
新年好!如意吉祥!大吉大利!おめでとうさんどす~☆

あの竹中直人(違、アショケ役の方はコメディー方面で有名なお方だったのですね。シリアスながらもどこかお茶目でほのぼのしている感じは、そういう面からきてるのかもしれませんね。
監督がインド出身、原作者がインド系アメリカ人(ロンドン生まれ)、2人の年齢差は半世代分ぐらいという、まことに微妙な距離感と立場の違いとねじれがありながらも、結果的に調和のとれた作品となっているのは奇跡。おそらく御両人とも色々な人生経験を積まれ、お互いを理解し(ようと歩み寄り)あった結果だと思われます。まだ翻訳本を読んでいる途中ですが、生きている事の不思議さを改めて感じさせてくれる素敵な作品です。
(同世代なのにこんな事しか言えないのが恥ずかしいの…^^;)

etchan
2008年01月05日 00:49

むっ、何か変に。恥ずかしい…、に訂正w
蒼い雪
2008年01月05日 02:49
実は、インドから帰ってきたばかりです。30年ぶりの再訪となりましたが、インドの変化と奥深さにはあらためて言葉を失っています。映画の世界にもそれが出ているような。。この映画も、主人公の女性に自分を重ねて見ました。娘は子供の世代の描写に自分を重ねていたようです。最後にインドに帰った(あ、ねたばれになりましたか。。すみません)のが、ちょっと???でしたけれど、そのあたりが「メリケンジャップ」との違いかも。インドを扱った映画といえば、監督の名前は忘れましたが、water,earth, fireの三部作が忘れられません。asianimprovさんは、このブログで扱われたのでしょうか。
hana
2008年01月05日 11:02
アメリカで見ました。日本で今公開していると知って、ぜひもう一度見に行きたいのですが・・・。
とってもいい映画でしたよね。私もお勧めです。
移民、名前、結婚、世代間ギャップ、など、インド系じゃなくても共感できる部分はいっぱいあると思いました。
2008年01月05日 20:51
既に観ておられる三人の方々から三種類のコメントありがとうございます。water,earth, fireの三部作は観ていません。調べてみます。インドは、映画にしても音楽にしても美術にしても文学にしても、ハマると抜けられない独特のテイストがあります。伝統音楽だと、タブラとシタールだけでトランス状態になってしまう。

知人にひとりだけインド系アメリカ人がいるので、この映画を観たかどうかを尋ねてみようと思います。

竹中直人。確かに似ている。(笑)

一度だけですがインドに行ったことがありまして、コルカタではなかったけれど、あの雰囲気は少しわかります。ただ、この映画が描いているベンガル地域は北部で、私が訪れたのは南部でしたが・・

そうそう、大勢のインド人が集まる宴会に参加した白人女性が戸惑う場面がありましたけど、初めてハワイの日系人の親戚たちのパーティーに参加した時のことを思い出しました。沖縄移民一世のお婆さんから「あんたはヤマトンチューか」と言われて絶句したなぁ。(笑)でも、あの時の奇妙な感覚が、このブログの源泉になっているのかもしれません。

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