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zoom RSS 住み慣れた土地を離れて移動するということ

<<   作成日時 : 2011/05/16 20:22   >>

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このブログでは移民についての話題が少なくない。それは私のひいじいさんが(←また書いてる)かつてハワイに移民していたという事実に起因しているけれども、それだけが理由ではない。私は文化に惹かれる。文化は人の移動と定住の間のダイナミクスにより生まれる。アジア系アメリカも、多文化主義も、日系人うんぬんも、人が移動することに密接に関係している。それが或る特定の時代に集団的に行われ、移住した先の国で集住した(コミュニティーを形成した)場合、その当事者たちは移民と呼ばれるわけだ。これは移民を研究する側の都合であることが多い。研究は常に普遍性を目指すので、集団を対象にせざるを得ない。結果、魅力的で特異な一個人の評伝などはジャーナリストの仕事領域になる。なお、現在は移民ではなく移住という言葉が使われる。横浜にあるJICAの施設も「海外移住資料館」であって「移民博物館」ではない。移民ではなく「海外移住(者)」という用語が使われている。たぶん、これは、immigrationとmigrationの違いなんだろう。

さて、このたびの大震災+大人災では、人と人、人と土地とのつながりの強さを感じないわけにはいかない。地震と津波ですべてが瓦礫となった後も、また同じ所に住みたいと願う多くの被災者がいる。政府の救援活動以前に、村単位で、また、更に小さな「字」の単位で互いに助け合い生き延びた多くの人々がいる。隣人が誰かも知らずに生きている、いや、そんなわずらわしいこと抜きで生きていけるような都市生活とは違う、切っても切れない関係の網目が「いざという時」に組織として機能する東北の町や村。震災後の秩序の維持と頑張りを「東北人の粘り強さ」という常套句で説明することはできないだろう。

この大震災に寄せて、移民史の専門家であるK大学のS先生は「人はなぜ移動するのか、移動せざるをえないのか・・という根本的な問いについても、本人の意思の有無にかかわらず、住み慣れた土地を離れて移動することを選択せざるをえない状況や現実が厳然として存在するから生じるのだということを認識しなければならない」と書いている。

これほどの被害を受けても、「生まれ育った土地から離れたくない」と口にする被災者の痛切な思いをメディアで知ると、反対に、そういう強い思いを断ち切って別の土地に移動するという行為の持つ計り知れない重さについて考えざるをえなくなる。

ここで話が飛躍するが、お許しいただきたい。

私のひいじいさんは、弱冠16歳で、何故、広島県の山村からハワイを目指したのか。一旗あげて故郷に錦を飾りたいから?。優等生的な解答だが、そんな説明では、「移動することの重さ」には迫れない。意図的な出稼ぎ移民と天災によるやむを得ない移動を同列には扱えないことははわかっている。しかし、人と人、人と土地との結びつきが強いコミュニティから―意思の有無にかかわらず―そのコミュニティの外へ出るということ、見知らぬ余所へ移動するという意味では、明治33年も平成23年も、広島県比婆郡も東北地方の被災地の村々も、大きなかわりはないのではないか。

S先生は「「多文化共生」や「人の移動」という考え方にしても、いまや圧倒的な現実と向き合うなかで、これまでとは異なる視野からの考察が求められる地点に来た・・そんな予感がしてなりません」とも述べる。

「圧倒的な現実」を前にしながら、自嘲気味にうだうだ書いている自分がなさけないが、とにかく、移動することの重さ、留まり続けることの重さの両方を忘れないようにしたい。新幹線で日本中がつながっても、高速道路が整備されようとも、インターネットでモノが買えても、携帯電話が枕元にあっても、隣村にさえ移り住みたくないのが人間なのだ。この「土地への愛着」と「移民という行為」は、一見、正反対に見えるが、実は、相補的な関係にある・・と直感的に思うのだけれど、それを整理して説明するには勉強も経験もぜんぜん足りない。

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内 容 ニックネーム/日時
宮城や福島の避難生活を余儀なくされている方々を報道で拝見するにつけ、東京電力下で相変わらずのほほんと暮らしている立場として心が痛みつつ、自分の無力さ、ずるさに後ろめたさと絶望感を味わい続けています。

>これほどの被害を受けても、「生まれ育った土地から離れたくない」と口にする被災者の痛切な思い
>移動することの重さ、留まり続けることの重さ

・・・特に郷土愛(という言葉は苦手なのですが便宜上)が強い土地柄の方々ゆえ、ただただ身の安全や子供の未来の為に、何もかも手放してよその土地へ行く。そのことがどんなに辛く苦渋の決断の末であったか、きっと想像を絶する重みに違いありません。
国内でも家の中(親中心)の世界観と外界の世界観が全く違うバイリンガル環境で育った私には確固たる「郷土」がないので(←またくどくど書いてる)、こうしたことを想像するのさえおこがましい気がします。移動することに慣れすぎていて、むしろその軽さや変化が心地よい、そういうタチなので、昨今の「ひとつになろう日本!」というようなキャッチフレーズにも逆に居心地の悪さと息苦しさを感じてしまう。被災者の若者達の労働力に今後の東北の未来はかかっている、それは本当にそうなのですけど、いっそこの機会に外の世界にどんどん触れ、心の風通しを良くするのもまた良し・・そんな事すら思ってしまい、不謹慎なのかなぁとひとり呟く日々。私自身は非国民と呼ばれようが全く構わないけれど、東北にだってそういう若者はいるだろう。彼らの(あるかもしれない)夢や未来がつぶされないことをひっそり祈っています。話が又ずれてすみません。
etchan
2011/05/22 02:53
人と人、人と土地のつながりが強いということは、それにまつわる「面倒な慣習」も引き受けねばならないということです。引き受けることにより、どこに誰が住んでいて、その人は何歳くらいで何をしている人かということを「情報」ではなく「つきあい」のレベルで共有することになる。しかしこの「つきあい」の濃さは、「村八分」というような排他性を伴うこともある。そういうのが嫌いな人は束縛から自由になろうとして「移動」し、そういう人たちが集まった所を都会という。勿論、経済的な面や仕事の選択肢など、「移動」の原因には他にも強い要因があります・・てな他人事みたいな説明では意味がないか。(苦笑)

ひとつ思うのは、土地に根付いた仕事をしてきた人間がその土地から「移動」してやりなおすのはものすごく大変だということです。今回の大震災+原発事故で、それが強烈に可視化されています。農業は田畑がないとできないし、酪農もそうです。漁業も、単に漁船と港があればいいというものではなく、市場や加工工場、港湾施設が整ってこそ成り立つ職業です。

私のひいじいさんがハワイに渡った1900年頃の中国地方は貧しかった。九州も。天災による飢餓状態が原因ではないものの、人口が多いのに食料は足らなかった。そこで、官民が出稼ぎ移民を奨励し、ビジネスにもなった。出稼ぎ移民は「人減らし」の役割もあったのです。漁業では和歌山県他の漁師が遠くカナダや米国まででかけ、めざましい仕事をした。

今と111年前をそのまま比較しても意味はないけど、人が「移動すること」或いは「移動しないこと」の・・なんていうのかな・・意味というか、生き方の選択というのか、そういうのは、同じじゃないかと・・
asianimprov
2011/05/22 19:08
>土地に根付いた仕事をしてきた人間がその土地から「移動」してやりなおすのはものすごく大変

・・・なるほど、確かに表面的な環境だけではなく、コミュニティー内の人付き合い、信頼に基づく相互扶助関係、「面倒な慣習」もろもろ、全て含まれるからという事ですな。

どうでもよい事ですが、考えるとウチの父方の祖父にしたって、半島から渡来して代々1500年とどまり続けてきた土地をふらりと出、ひとり息子なのに一切帰らず、寺の宗派も変えた。そこには一体何があったのだろうと今はちょっと思ったりします。単なる金歯の河内のおっさんという記憶しかありませんが(微笑)。

移動すること、しないこと。土地にとどまること、あまりとらわれないこと。様々な差し迫った事情以外には、意外とその人が元々どこのもんであるかというのも関係あるかもしれないなぁ、と思ったりもします。海のもんか山のもんか。農耕民族か狩猟民族か。寒いとこのもんか暑いとこのもんか。無口かおしゃべりか。
もちろん、日本人(又は日本にいる人)はみなチャンプルーですから、どの要素がその人に強く現れているのかというのもあるかもしれませんな。なんてこれ、全くの素人考えですが(苦笑)。
etchan
2011/05/24 00:37
移動することが好きな人っていうのは、いると思います。どんな人がそうなのか、環境なのか性格なのかはわかりませんが、例えば、北米やハワイに移民した後、日本に戻らず、あるいは、いったん日本に戻ってから、満州に移動した日本人は結構いたそうです。無論、「満州国」は日本の植民地であり、北米やハワイと同じようには扱えませんが。

「移動する人生」を選んだ日本人=日本という土地にこだわらず、自分の思うように移動した日本人もいた。

ところが、そういう日本人は、日本の日本人からは「不可視な存在」で、変わり者という目で見られる。

先日、満州での日本人を研究している研究者と話をしたら、話が止まりませんでした。私がハワイの話をしても、すぐ理解してくれるんです。満州の場合「引き揚げ」の問題があり、北米やハワイや南米の「移民」とは違うのですが、日本人が集団で移動するという部分では、同じなんですよね。無論、朝鮮半島の場合も。
asianimprov
2011/05/24 18:16
それが或る特定の時代に集団的に行われ、移動した先の国に集団として定住した場合、その当事者たちは移民と呼ばれるわけだ。

移民の定義は、”集団として移動した人々”なのですか。

蒼い雪
2011/05/28 05:23
蒼い雪さま

あ、誤解をまねく書き方でした。「移住した先の国で集住する(コミュニティーを形成する)人々」のことです。訂正しておきます。
asianimprov
2011/05/28 09:40
この記事を読んでから、ずっと考えていました。自分のこととも重ね合わせて。まだ答えは出ていませんが、「住み慣れた土地を離れた」経験がある者として、そして自分の生まれ故郷に非常に愛着を持っている者として、共感できる部分があれば、できるだけ寄り添っていきたいなあと思います。
hana
2011/05/28 11:54
移民の定義は、
移住した先の国で集住する(コミュニティーを形成する)人々
とのこと。。ますます混乱してきました。英語のimmigrant には、そんな意味はないように思うのですが。。日本語では”移民”でも”移住”でもいいですが、その言葉に対応すると日本人が考えている、たとえば英語の”immigrant”とのあいだに意味のギャップがかなりあると思われるとき、一体研究における”普遍性”とは何なのでしょうか。移民学が数学や物理学のような”普遍性”をもちえないのは自明と思ってますが、それにしても、なんだか”学問”としては、出発点からしておかしいような気がしてきました。(悲)
蒼い雪
2011/05/31 23:12
「移民」の内実が変化しているので、「移民学」というジャンル自体も変化していくと考えていいと思います。「移民学」は研究対象であり、方法論は、歴史学、社会学、文化人類学、地理学、経済学、文学、等々、なんでもアリです。

僕なんて、自分が行うプレゼンテーションが「何学」なのかすら自覚していないです。学問にとらわれると、頭が固くなってしまうので、自分のやりたいようにやります、というか、実際、自己流しかできない。だから批判や反論は覚悟の上です。(トホホ)
asianimprov
2011/06/03 13:49
またよこちょから土足で上がりこんでしまいますが(苦笑)、それでは英語の”immigrant”の定義や本来の意味はどんな感じなのでしょう。手元の10年前の学習用LONGMANには、「someone who enters another country to live there」としか書かれておりませなんだ…。

別の意味で(なんせアホの子なので)学問にとらわれずに考えるに、結構身近なところ、たとえばそのウチの料理や食べ方などにもルーツが色濃く現れたりする。そんなことに個人的に興味があります。
etchan
2011/06/05 01:21
immigrantion(イミグレーション)は「定住を前提とした移住(移民)」のことで、migration(マイグレーション)は必ずしも定住を前提にも目的にもしない移住(移民)のことだと研究者の人から聞いたことがあります。ただ、日本語では、いずれも、「移民」になるので、明治時代に、3年間の契約移民で、帰国を前提に単身でハワイに行った「移民」も、定住を目的に家族でブラジルに渡った「移民」も、「移民」になってしまう。

定義って、ややこしいです。

余談ですが、実際は、幾つかの理由でハワイに定住する「出稼ぎ者」が増え、「移民」の意味も変化してくることになります。

「出稼ぎ者」にとっての「成功」は、短い期間で金銭を蓄えて帰国することでしたが、いったん「定住」を決めると、移民先の社会でいかに豊かになるか、名声を得るかが「成功」の指標になる。

だから、「成功物語」といっても、立場によってまったく違う内容になるのですね。
asianimprov
2011/06/05 09:25
移民と聞いてまず思い出すのが、学生の時に観たチャップリンの「The Immigrant」。何かから逃れるようにヨーロッパからアメリカ行きの船に乗り、すったもんだの末、ようやく陸地が見えてくると自由だ!と皆が一斉に沸き立つ。あの感じが、immigrantという言葉に対して最初に私の脳に植えつけられたイメージです

結局、人の人生は綿密な計画通りに行くとは限らない(むしろ行かない)ですし、その時その時出来る限りの最良の選択の末にそうなった、としか言いようが無かったりしますよね。また身近な話ばかりですが、私の米国逃亡中時代の友人の場合、最初からこの地で何かをつかんで生き残ろう!と息巻いていた人よりも、むしろただ何となくふらっと来てしまって大丈夫か?この子?というように頼りなかった人の方が、その後に何かを見つけて定住し、生き生きと活躍している事が多いです。人生は不思議に満ちています
etchan
2011/06/05 15:14
人生も政治(家)も不思議に満ちている。満ち過ぎていて普通の人には理解不能ですが。(苦笑)

私、人生設計も計画もないです。はい。(-_-;)

ただ、幸運を待ち、皆さんの助けを頼りに、自己愛をエナジーに変えて世界の片隅に居座るだけ。

チャップリンの映画それ自体がイミグラント的じゃないですか!普通の生活空間に異型の人間(移民)が現れて騒動を起こす。おまわりさんが追いかけチャップリンが逃げる。

チャップリンのThe Immigrantを見てみたくなりました。本気で。

余談ですが、周防監督の「ダンシング・チャップリン」は、バレエを引退する奥方に捧げられた個人映画でしたが、ダンスは見事でした。客は入らん作品ですが。
asianimprov
2011/06/06 20:54
話を引っ張るようですみません。

migrateというと、migrate workers(あちこち移動しながら働く労働者)というイメージがどうしてもあります。おそらく私が目にしているのはメキシコなどからの労働者に対して使われているからでしょう。今自分が「移民」と認識しているのは、immigrateに近く、定住している(あるいはする、と決めた)人のことだと思っています。コミュニティを作るかどうかは、出身国や移民の規模にもよるだろうし、時代によっても違うと思います。ただ「移民として成功する」というのはどこか普遍的なものがあるかもしれません。もちろん元エリートだった人が運転手や商店主として移民するのか、ホスト国でもエリート的な職業に就くのかによって違ってくると思いますが。
hana
2011/06/08 00:10
hana-san

「「移民として成功する」というのはどこか普遍的なものがあるかもしれません」

「普遍的なもの」は、感じます。例えば、出身国ではとてもできそうにない仕事や冒険や生活が移民先で可能になることはしばしばです。そしてそれは必ずしも金銭的な尺度で測れるものではない。

「達成感」「興奮」「感動」・・。これらは金銭的な成功だけでは得られない。

かつて、ハワイに武居熱血という人物がいました。山口県出身の一世なんですが、ホノルルで呉服屋を営みながら、ハワイの各島に暮らす日本人を現地に訪ね、町や耕地の地図を手書きで作って出版している。某大な時間と費用とエネルギーをかけた本なので、よほどのベストセラーにならないと、利益は出なかったでしょう。しかし、それらの本を読むと、武居熱血(名前も凄い!)は、そういう作業を楽しんでいるようにみえます。

誰かに頼まれたわけではないし、出版社を持っていたわけでもない。「弁士」として活躍したそうですが、ハワイの日本人社会を動かした政治家でも宗教者でも教育者でもない。

しかし、こういうユニークな仕事が、今、とても役に立っている。彼の旺盛な好奇心と熱意は時代を超越している。要するに、普遍的なのです。
asianimprov
2011/06/09 19:01
熊本県川辺川ダムによる水没予定地の移転問題を調べたことがありますが、外因によって数百年間住み続けた土地から別の地へ離れざるを得なかった人の決断の重さを感じました。
まる
2011/06/28 13:10
まる様

ダムによる水没ですか。一度水没した集落が、ダムの水量が減った時に現れることがありますが、あれは、なんともいえない光景ですね。

勿論、ダムにより得られるものは大きいのでしょうが、自分が生まれ育った土地が「水没する」というのは、言葉にできない寂しい出来事でしょう。

ビルになったりマンションになるのとはわけが違う。二度とその場所に行けないんですから・・

ダムどころか、大きな河川もない所に住む僕には想像もつきません。

asianimprov
2011/06/28 20:10

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