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help リーダーに追加 RSS 「切り換える」ことは可能か? − 北京五輪で「オシムの言葉」を思い出す

<<   作成日時 : 2008/08/22 20:56   >>

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最初の試合で負けた日本の選手や監督がオリンピックでよく口にする言葉に「切り換えます」「切り換えて次の試合に臨みます」というのがある。この「切り換える」という言葉をテレビで聞く度に、「そんなん、無理やろ?」と僕は違和感を感じていた。パソコンのスイッチを切り換えるように自分を「切り換える」ことができる人間がいるだろうか?。「切り換えます」と言う場合、ほとんどは「気持ちを切り替える」という意味だろう。しかし、一晩や中一日で気持ちが切り換えられるわけがないではないか?。

「切り換え、切り換え」と言い聞かせる選手よりも、必死だけれども自分を見失うことなく競技を終えた選手に僕は魅力を感じる。明らかな実力差を認める時の選手はむしろすがすがしく見える。卓球の福原愛が世界ランク一位の選手に負けた時、愛ちゃんは実に良い表情をしていた。自分の実力が確かめられたのだろうか、「手応え」を感じた喜びが画面から伝わってきた。自分の優れている点も弱点もわかったすがすがしさだ。負けは負けだが、試合したらどちらかが勝ち、もう一方が負けるのだ。愛ちゃんと似たものを女子サッカーチームからも感じた。メダルは逃したけれど、メンバーの表情は決して暗くなかった。これこそがスポーツの良さではないか。オリンピック精神ではないのか。

この、日本人選手により多用される「切り換え」という言葉で思い出したのが、あのイビツァ・オシム元日本代表サッカーチーム監督である。

木村元彦氏による渾身のノンフィクション本のなかで、オシムはこう語っている。

「(前略)私には、日本人の選手やコーチたちがよく使う言葉で嫌いなものが二つあります。『しょうがない』と『切り換え、切り換え』です。それで全部を誤魔化すことができてしまう。」  
                     『オシムの言葉』文庫版 P.289 (上写真)

この本で、オシムは、「しょうがない」についてはドイツ語との比較をして述べているものの、「切り換え、切り換え」についての説明はない。しかし、Jリーグの自分のチームや日本代表の選手やコーチから、試合に負けた後や思うように試合が進まない時にこの「切り換え、切り換え」という日本語を何度も聞かされたのであろうことは想像に難くない。しかし、「切り換える」ことなど不可能な状況で、ただ口先だけで「切り換え、切り換え」と喋る日本人選手たちの特異さに驚いたに違いない。

オシムの言う通り、「切り換え、切り換え」「気持ちを切り換えてやるしかない」では単なる精神論に過ぎない。「今日負けたのは<しょうがない>から明日からは<気持ちを切り換える>」で済むのなら技術はいらない。ところが、日本人選手はまるで免罪符のようにこのフレーズを繰り返して、何かを解決したように、何かが解決できるように思いこんでしまう。そういうことをオシムは言いたかったのだろう。

「それで全部を誤魔化すことができてしまう。」とは、なんと痛烈で的を射た日本人への批判であろうか。

追記:

『オシムの言葉』(文庫版)にもうひとつ凄いフレーズを見つけた。

「(前略)お前ら、今日は絶対に勝たないとだめだぞとか、相手の足を削ってでもゴールを守れ、そんなことは絶対言わない。別に、勝たなければならない試合なんてないんだ、お金云々じゃない。(中略)まずは自分たちのために、自分たちのやれることをやり切るということが大切だという話をする。次に、対戦相手が自分たちと試合するに当たって何を考えて臨んできているかということを思考させる、そういう話をする」(P.209)

「別に、勝たなければならない試合なんてないんだ」なんて、試合前の監督が選手に言う言葉ではない。勿論、オシムだって試合に負けたいわけではない。走り回って早いパスを回す攻撃的なサッカーがオシム監督のスタイルだ。リスクを恐れず攻めるオシムが話す言葉だからこそ、ここに含まれる意味は深く、本質を突いている。

美空ひばりも唄ったではないか。「勝つと思うな、思えば負けよ」と。「金しかない」と何度も宣言していた某国の野球監督は本当に疲れただろう。気の毒に思う。しかし、落ち着いたら、この本を読んでみたらどうだろう。


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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
うっすいアホ〜な人生を送っておりますあたしのほんの戯言ですが。。
(そして昔4年も履修したのにドイツ語でしょうがないを何というのか、全く見当もつかないのに唖然としつつ・・w)
多くの日本人は長年ムラ社会の中で、その時その時の長(エライ人)の言うことをハイハイと素直に聞いて暮らしてきた事もあり、良く言えばまとまりやすいのですが、悪く言えばひとりひとりが自分(個)と向き合う事をしない、むしろ避けてきた感があります。そして向き合うような人をむしろ協調性の無い人とみなしてツマハジキにする。
和をもって貴しとなすが故に、個を活かすよりも常にまとまりで行動する事が最大のプライオリティーなので、「しょうがない」とあっさり諦め、一斉に「切り換え」たいのかもしれません。
etchan
2008/08/23 03:08
(続きです・・・長くてすんまそん・・・w)

愛ちゃんは幼い頃から自分の意思でやりたい事をやってきた(それも早くから異文化体験をしたりしつつ)お方であり、また女子サッカーの方々も「なんでオンナの子がそんな事を??」と言われたり色眼鏡で見られたりしながら夢に向かって努力してきており、何故自分がそれをするか、したいかを常に自分に問いかけながら自分と向き合ってきたに違いありません。
だから周囲の口先だけの「金メダル、金メダル」に惑わされたりせず、自分なりの精一杯のプレイが出来、そこから何かを学びつつ結果に納得できたんだと思います。
自分と向き合うのは時に勇気がいるけれど、自分のケツは自分で拭かなきゃ、ですね。
なんてテキトーなことを又書いてしまいました。
etchan
2008/08/23 03:09
この記事を読んで書こうと思ったことを、全てetchanさんに先を超されてしまいました(汗)。
「切換え」などという言葉でなんとかならないか?などという思考自体が結局自らのチームが何のポリシーもなくやってきた証しな訳で、言い訳以外の何ものでもありません。こういった事を書くと「頑張ってる彼らなんだから…」とか「その世界を知りもしないくせにエラそうに…」とか云うショート気味の人がこの国には多く存在しますが、ちょっと違うんだよ!と私は言いたい。
そうじゃなくて、ドイツは今期のFEFAであれだけ活躍したのはスター選手がいたからでは無く、一貫したベース造りにあったのだよ…ってネ。
何しろ、政治や差別が裏で思いっきり絡むオリムピックに何の興味もない私ですが、個々の選手は頑張っているのですからむべも無く扱う訳には行きません。で、結局テキトーなことを書いてしまうんです、ね、etchanさん。
torigen
2008/08/23 12:28
>etchan

etchanらしいお下品なお言葉(爆)ありがとうございます。(笑)女子サッカーのメンバーの多くはアマチュアで、仕事をしながら練習しているとか。Jリーグ選手やプロ野球選手で固めた男子チームとはどこか違うと思いました。「なでしこジャパン」というチーム名(誰が決めたの?)なんて関係ないという感じの澤選手(米国のプロリーグで活躍していた)やアフロヘアーの荒川選手のガッツと、最後まで誰が司令塔だかわからなかった反町ジャパンとの落差は、サッカーの素人にもわかりましたしね。

しかし、オシムさんというひとの言葉は本当に重い。サッカー選手の言動から日本人の思考スタイルを的確に読みとっている。オシムさんの病気と監督交代は本当に痛い。サッカー界だけでなく、日本人にとって痛い。
asianimprov
2008/08/23 12:57
>torigen-san

「頑張ってる彼らなんだから…」はその通りなんですが、頑張るにも「頑張り方」ってのがある。余計なことについて頑張っているように見えます。オシムが言うように、まずは自分(たち)のため頑張らなきゃ。

このオリンピックを見ていると、スポーツって何のために、誰のためにするものなのかと疑問に思うシーンが多くて困惑します。メディアが朝から晩まで「メダル!」「メダル!」と叫ぶのもどうかと思うんですけど、そう思うtorigenさんや僕は少数派なんでしょうね。

しかし、オリンピックを利用して戦争が始まったのには驚きました。かつてはオリンピック期間は休戦とかだったのに、逆に利用されている。世も末です。東京でオリンピックなどやるな!他にやることがあるやろが!
asianimprov
2008/08/23 22:31
石原にはそういった気持ちは判らんだろネ?わはは。
torigen
2008/08/24 07:19
・・・はいはい、お上品な「なでしこ」のあたしが再び通りすがりましたよ。
(しかしてその実態は、オンナ高田純次、テキトーオンナw)

なにがなんでも金!ムードとか、マラソン選手の故障続きとかみていると、ホント誰の為にやっているんだろうって思いました。個人プレーであれ団体プレーであれ、一生懸命努力するのは当然ですが、己の力量やペースを知れ!(あらまたお上品)なんて思ってしまいました。自己管理能力は我儘なんかじゃない。

東京五輪(欽ちゃんがCMに出ていてガッカリ)、ホント要らないです。どうせチケット価格が高騰して入手できないだろうし(と前回の五輪について母がそう申しておりましたw)、築地移転による食の安全問題の方がはるかに心配です!
(ついでにあの移転先辺りは、かつて戦争で消えた幻の東京五輪前に特定の方々が強制移住させられた所の近くだというのはパッチギ続編で記憶に新しい、と。)
etchan
2008/08/25 01:50
はじめまして。いつも大変興味深く読ませて頂いてます。

オシムが人心をつかむのは、さすがこの時代の指導者と思いました。

でも昭和を代表する美空ひばりに同じことを教わるとは。

きん以外いらない。



勝つと思うな 思えば負けよ

対比したときに見えてくる、勝利を目指す心構え。

勉強になりました。ありがとうございました。
岩下和了
2008/08/29 19:50
岩下さま

いやぁ、拙ブログまで来て下さり恐縮です。最初、日本人選手はオシムに困惑したのですが、徐々にその言動と態度に惹かれていきます。そういうタイプの指導者がいいですね。熱血じゃなくて、じわじわと効いてくるのがいい。

ホシノさんが「キンしかいらない」と連呼したのも、それを期待した日本人が多かったからで、ホシノさんだけを責めるのは酷でしょうし。

女子レスリングで金メダル確実と言われ、実際に穫った吉田沙保里さんでさえ「まさか連続して金メダルが穫れるとは思わなかった」と試合後に言っていた。謙遜ではなくホンネでしょう。勝つということはそれほど難しいことなんだろうなぁとスポーツ音痴の私も感心した次第。

やっぱり「勝つと思うな、思えば負けよ、負けてもともと〜」ですね。阪神タイガースには勝ってほしいけど。(自爆)
asianimprov
2008/08/31 10:39

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