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help RSS 戦前の日系アメリカ社会における童謡と踊り − 朱塗りの橋

<<   作成日時 : 2007/02/24 10:11   >>

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LA在住の旧友から届いた書籍。去年出版されたばかりだ。予期せぬ贈り物には感激するが、この本は特別だ。LAにあった(今もあるが住宅はない)小さな人口島「ターミナル島」Teminal Islandは、戦前、漁業のコミュニティーを形成していた。漁船が持ってくる魚を処理し缶詰にする工場があった。造船所もあったらしい。人口は約3,000人。日系(一世と二世)、イタリア系、ロシア系他が労働者であった。小説『二重国籍者』の主人公タック岩村(岩村武)は帰米二世だが、USCの学生で、学費を稼ぐためにターミナル島でバイトをしていた時に収容所に送られたという設定になっていた。ターミナル島に住む一世600名は真珠湾攻撃の直後にすべて拘束され拘置所に送られた。残りのすべての日系人も、他の場所の日系人よりひどい扱いを受けた。なんと48時間以内に強制退去させられたのだ。漁業従事者はスパイだという明かな偏見がこのような悲劇を生んだと思われる。当時の差別的宣伝の一部はこの本でも紹介されている。三世のジャズピアニストGlenn Horiuchiは"Teminal Island Sweep"という曲を書き、録音している。当時のターミナル島の日系人の人口は千人前後であろうか。

さて、この本は、ターミナル島にあった唯一の日本人小学校に長年勤めた白人の先生が保存していた資料と原稿を元にして編集されている。その名をルシール・リーガンという。ルシール大叔母の原稿を再発見し、使命感を持って本を作ったのはマギー・シェルトンである。このような仕事が、日系アメリカ人と直接的に関係の薄い白人によって成されたことに感謝したい。

リーガン先生は日本の子ども文化、特に童謡や踊りを大切にした教育を行った。校内には日本庭園があり、ひな祭りなどを祝った。ピアノが弾ける唯一の教員だったリーガンは、日本人教師と協力し、英語の歌詞を併記した譜面を整備した。この本には、踊りの振り付けも写真入りで詳しく解説されている。結構豪華な着物を着ている女子児童たちの写真が印象的だ。表紙の写真(上)を見てほしい。日本庭園にあった朱色の橋(これがこの本の書名になっている。ブリッジにはふたつの国のふたつの文化をつなぐという意味も込められている)の上に並んだ子供達の表情はやや不安げに見えるけれども、綺麗なオベベを着ることができるハレの日に硬くなってしまったのかもしれない。この他、子供達を撮った写真が多数挿入されているが、実に濃い。濃いとしか表現できない、今のところは。

肝心の童謡だが、私たちに近しいものが多い。「おててつないで」「でんでんむしむし」「はるがきた」「どんぶらこっこ」「ゆうやけこやけ」「すすめのこ」等々が楽譜と振り付け入りで載っている。楽譜にはローマ字での歌詞と英語詞が添えられている。「君が代」に英語の歌詞があるとは知らなかった。

この小学校は、日本人学校ではあったが、授業は英語で行われており、英語の堪能な日本人教師もいたので、英日のコミュニケーションはうまくいっていたようだ。ターミナル島という密度の濃いコミュニティー(住居の写真があるが、環境は良いとはいえない。バラック住まいである)で、戦前、一世や二世(こどもたち)がどんな生活をしていたかは、一般的にはほとんど知られていない。同じ日系アメリカ人でもターミナル島のことは知らないひとが少なくない。

一教員が作成した教材と写真に光を当てるとともに、ターミナル島の歴史的背景や写真にもページが割かれており、読み応えのある本になっている。いわゆる「研究書」ではなく、当時の記録と記憶を残し、次の世代に伝えるためのクラフトワークのような飾り気のない本だ。

最後に、この本は、米国人向けに書かれてはいるが、私たちにも戦前の日本文化を、移民社会での学校教育を経由して再体験させてくれる希有な記録であることを強調しておきたい。

"Red Lacquer Bridge"

The Story of a Forgotten Community and a Bridge Between Two Worlds

by Maggie Shelton

(AuthorHouse 2006)

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コメント(3件)

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童謡や踊りを大切にした教育・・・なるほど、先生のケルトな血が騒いだのかもしれませんね。
君が代の英訳もかなり気になるところです。。。
etchan
2007/02/26 01:51
リーガン先生の計らいは、いかに、当時のターミナル島の人々に、慰めになったことでしょうね。
KISHIKO
2007/02/28 16:59
実は、この本には付録でCDが付いています。無論、録音し直されたものですが、70年前の多文化教育!を甦らせる強い意志には脱帽です。

リーガン先生自身にはお子さんはおられなかったと書いてあります。でも、ターミナル島の日本の生徒たちが彼女のこどもたちだったのでしょうね。
asianimprov
2007/03/01 19:19

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